AGAの治療薬として広く知られているフィナステリド(商品名:プロペシアなど)。実はこの薬、もともとは薄毛のために作られた薬ではありませんでした。前立腺の病気を治すために開発された薬が、思わぬきっかけでAGA治療薬として生まれ変わったのです。
もともとは前立腺の治療薬だった
フィナステリドはアメリカの製薬会社メルク社が開発した薬です。1992年にアメリカのFDA(食品医薬品局)によって「プロスカー」という商品名で前立腺肥大症の治療薬として承認されました。
前立腺肥大症とは、加齢とともに前立腺が大きくなり、おしっこが出にくくなったり頻繁にトイレに行きたくなったりする病気です。フィナステリドは前立腺を小さくする効果があり、こうした症状の改善に使われていました。
臨床試験で偶然発見された「副作用」
前立腺の病気を持つ男性を対象にした臨床試験の中で、興味深い副作用が発見されました。薬を飲んでいた男性たちの髪が生えてきたのです。
これは研究者たちにとって予想外の発見でした。メルク社はこの副作用に注目し、薄毛の治療薬としての可能性を調べ始めます。
AGA治療薬「プロペシア」として承認
詳しい研究の結果、フィナステリドが薄毛に効く仕組みが明らかになりました。
フィナステリドは体内で男性ホルモンが「DHT」という物質に変わるのを防ぐ働きをします。このDHTがAGAの直接的な原因であることがわかっていたため、DHTを減らせば薄毛の進行を抑えられるという考え方です。
1997年12月22日、FDAはフィナステリド1mgをAGA治療薬として承認しました。「プロペシア」という商品名で発売されたこの薬は、男性の薄毛を効果的に治療できる初めての飲み薬となりました。
日本では2005年に「プロペシア」として承認され、現在は多くのAGAクリニックで処方されています。
前立腺用と薄毛用では用量が違う
同じフィナステリドでも、前立腺肥大症用と薄毛用では飲む量が異なります。
前立腺肥大症用のプロスカーは5mg、薄毛用のプロペシアは1mgです。薄毛の治療には少ない量で十分な効果が得られることが研究でわかっています。
臨床試験でわかっていること
臨床試験では、毎日服用することでDHT値を最大60%減少させ、86%の男性で薄毛の進行を止める効果が確認されています。さらに65%の参加者で毛髪の増加が認められました。
ただし効果が出るまでには時間がかかります。最低でも6ヶ月、しっかりとした効果を確認するには1年程度の継続が必要とされています。
副作用について
フィナステリドの副作用として、性欲の低下や勃起障害などが報告されています。ただし発生率は低く、服用をやめると改善することがほとんどです。気になる症状が出た場合は自己判断でやめるのではなく、担当の医師に相談することをおすすめします。
まとめ
フィナステリドは前立腺の治療薬として開発され、臨床試験中に偶然発見された「髪が生える」という副作用がきっかけでAGA治療薬として生まれ変わった薬です。現在では世界中で最も広く使われているAGA治療薬のひとつとなっています。
薄毛が気になる方は、まず専門のクリニックで相談してみることをおすすめします。
参考文献
- American Hair Loss Association. Finasteride (Proscar/Propecia).
- 日本皮膚科学会「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017年版」



