男性は30代以降、テストステロンが少しずつ減っていく

「なんとなく疲れやすくなった」「やる気が出ない」「体型が変わってきた」——30代を過ぎてから、こうした変化を感じる男性は少なくありません。

その背景の一つとして、加齢に伴うテストステロンの低下が関係している可能性があります。

男性ホルモンは30代以降、少しずつ減っていく

男性ホルモンの代表であるテストステロンは、性欲や生殖機能だけでなく、筋肉量や骨の健康、エネルギーなどにも関わる重要なホルモンです。

テストステロンの血中濃度は、年齢とともに徐々に低下することが知られています。米国の内分泌学会(Endocrine Society)も、30歳以降はテストステロンが年約1%ずつ低下すると説明しています。

また、890人の男性を対象にした縦断研究では、加齢に伴って総テストステロンや遊離テストステロン指標が低下することが確認されています。

参考:Harman SM, et al. Longitudinal effects of aging on serum total and free testosterone levels in healthy men. J Clin Endocrinol Metab. 2001;86(2):724-731.

Harmanらの原著論文(Oxford Academic)

Endocrine Society「Hypogonadism in Men」


テストステロンの減り方には個人差がある

ただし、テストステロンの低下速度や血中濃度には個人差があります。

加齢だけでなく、体重や健康状態、睡眠、服用している薬など、さまざまな要因がテストステロン値に影響することがあります。

たとえば、若く健康な男性10人を対象とした小規模な研究では、1週間にわたって睡眠時間を約5時間に制限したところ、テストステロン値が10〜15%低下したと報告されています。

ただし、この研究は対象者が10人と少なく、短期間の睡眠制限を調べた研究です。そのため、「睡眠不足なら必ずテストステロンが低下する」とまでは言えません。

参考:Leproult R, Van Cauter E. Effect of 1 Week of Sleep Restriction on Testosterone Levels in Young Healthy Men. JAMA. 2011;305(21):2173-2174.

JAMA「Effect of 1 Week of Sleep Restriction on Testosterone Levels in Young Healthy Men」

また、肥満は低テストステロンと関連することが知られており、体重減少によって肥満に伴う低テストステロン状態が改善する可能性を示した研究もあります。


テストステロンが減ると薄毛になる?

テストステロンと薄毛(AGA)には関係があります。

ただし、「テストステロンが多い男性ほどハゲる」という単純な話ではありません。

AGAでは、テストステロンが5α還元酵素によって、より作用の強い**DHT(ジヒドロテストステロン)**に変換されます。

このDHTが毛乳頭細胞などに作用することで、前頭部や頭頂部の毛髪が細く短くなる「ミニチュア化」が起こり、AGAの進行につながります。

つまり、AGAではテストステロンの量そのものだけでなく、DHTが毛根にどのように作用するか、そして毛包がDHTの影響を受けやすい体質かどうかが重要です。

そのため、「テストステロンが減ればハゲなくなる」「テストステロンが多いからハゲる」と考えるのは適切ではありません。

日本皮膚科学会「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版」

日本皮膚科学会「脱毛症Q7 男性型脱毛症の治療にはどのようなものがあるのでしょうか?」


気になる症状が続く場合は医療機関へ

テストステロンが低下すると、性欲の低下、勃起機能の低下、エネルギー低下、筋肉量の減少、気分の落ち込みなどがみられることがあります。

ただし、こうした症状だけで「テストステロンが低い」と判断することはできません。

日本では、こうした状態について**LOH症候群(加齢男性性腺機能低下症候群)**という言葉が使われています。

LOH症候群が疑われる場合は、症状や経過を確認したうえで、血液検査によってテストステロン値などを調べます。

海外の診療ガイドラインでも、男性の低テストステロン症は症状・徴候に加えて、テストステロン値が一貫して低いことを確認して診断することが推奨されています。1回の血液検査だけで判断するものではありません。

日本泌尿器科学会・日本メンズヘルス医学会「LOH症候群(加齢男性・性腺機能低下症)診療の手引き」

Endocrine Society「Testosterone Therapy for Hypogonadism Guideline Resources」


テストステロンを維持するために生活習慣も大切

加齢によるテストステロンの低下そのものを完全に止めることはできません。

一方で、睡眠不足や肥満など、テストステロン低下と関連する要因を改善することは重要です。

十分な睡眠をとること、適度に運動すること、バランスのよい食事を心がけることなど、健康的な生活習慣を維持しましょう。

ただし、「この生活習慣をすればテストステロンが必ず上がる」と断定できるわけではありません。運動についても、研究によって効果の大きさにはばらつきがあります。


30代以降の体の変化を知っておこう

30代以降は、テストステロンを含め、体のさまざまな変化が少しずつ現れてくる時期です。

疲れやすさや筋肉量の変化、性欲の低下などが気になったとしても、年齢だけを理由に自己判断するのではなく、症状が続く場合は医師に相談することが大切です。

そして薄毛についても、「男性ホルモンが減ったからハゲる」「男性ホルモンが多いからハゲる」と単純に考えることはできません。

AGAでは、テストステロンから変換されるDHTと毛包の感受性が重要なポイントになります。